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停留精巣
(ていりゅうせいそう)

停留精巣について

停留精巣停留精巣とは、本来生まれる前に腹部と太ももの間に走る鼠径管を通って陰嚢内まで下降するはずの精巣が下降せず、途中の位置で止まった状態を言います。片方の精巣が陰嚢内に止まっている状態を片側性、左右の精巣が両方とも止まっている状態を両側性と呼びます。また、精巣が体の外まで降りてこず腹腔内にとどまった状態(腹腔内精巣)もあります。

停留精巣の原因

停留精巣の原因はまだはっきりとは分かっていませんが、胎生期のホルモンバランスの異常や精巣を陰嚢内に固定する靭帯である精巣導帯の異常が関与していると指摘されています。

停留精巣の症状

乳幼児期には特に体や成長に悪影響を及ぼすことはありません。しかし、精巣が陰嚢内に降りてきていないと、精巣の温度が高くなってしまい精子の機能が低下して男性不妊の原因になったり、精巣がんになる確率が高くなるとされています。精巣がんになる確率(リスク)に関しては、通常の数倍程度と言われています。以前は、精巣がんの合併が重視されていましたが、現在では精巣機能の低下が手術の必要性の主な理由になっています。また、陰嚢内で精巣がうまく固定されていないため、精巣がねじれて「精巣捻転症」を引き起こす恐れも高くなります。

 

精巣捻転症とは?

精巣捻転とは、精巣が陰嚢内でねじれて血流が妨げられてしまっている状態です。新生児の場合、無症状のことが多いのですが、中には陰嚢が暗赤色に変色してみつかることもあります。出生直前や胎児期に捻転して出生直後から陰嚢が暗赤色に変色し腫脹を伴うことや出生時にはすでに精巣が萎縮してなくなっていることがあります。成長とともに男性ホルモン(アンドロゲン)の分泌が増加し精巣が肥大化するため、思春期に多く発症します。恥ずかしさから受診が遅れてしまうケースがありますが、精巣のねじれを8時間以上放置すると、精巣が壊死を起こし片方の精巣を除去しなければならない恐れもあります。突然、陰部に激しい痛みや腫れが現れたり、下腹部の痛みや吐き気、嘔吐がある場合は、早急にご相談ください。

停留精巣の診断・検査・治療

停留精巣の診断・検査

特に症状はなく、健診の時にみつかることがほとんどです。精巣は緊張時や泣いている時、寒い日などは高い位置に移動する特徴があるため、正確に検査を行う際には、ご家族の方に協力していただく必要があります。お子様が緊張したり泣いてしまったりした場合には、また日をあらためて診察を行うこともあります。

また、当院では超音波検査を実施しています。陰嚢や鼠径部の精巣の確認や精巣の大きさ、位置、血流、内部の状態などを確認し、より精密な検査や手術が必要と判断した場合には、当院と連携する小児専門の高度医療機関をご紹介いたします。精巣が体表にない場合(片方しか存在しない場合)は、MRI検査や腹腔鏡による精査(同時に手術)が必要になり、超音波で精巣が確認できない場合なども当院と連携する小児専門の高度医療機関をご紹介します。

遊走精巣(移動性精巣)との鑑別

停留精巣と似た病気に、遊走精巣(ゆうそうせいそう)というものもあります。遊走精巣では、精巣は陰嚢内に降りてきていますが、冷えや腹部に緊張することで精巣挙筋の作用で挙上しやすい状態です。お風呂や寝ている時などリラックスしている時に陰嚢内に降りてきていれば、問題ないことがほとんどです(一般的に、健診などの診察時に泣いたりするとこの緊張が高まり精巣が陰嚢の頭側まで挙上し正確な精巣の位置の評価が難しくなります。精巣の位置を正確に評価するには蹲踞位(剣道の構えの状態)にできると精巣挙筋の影響を抑えることができて精巣の正しい位置が評価できます。遊走精巣は、一般的に精巣は成長に従い精巣の位置が陰嚢内に安定してとどまるようになるので手術は必要ないですが、徐々に精巣が上がって停留精巣と同じ状態(上行精巣)があるので経過観察は重要です。また、精巣の固定が悪いので、停留精巣と同様に「精巣捻転症」を引き起こす危険性が高く、危険性が疑われる場合は手術が必要です。

停留精巣の治療

生まれてすぐに精巣が陰嚢内になくても生後6か月までは自然に下降してくることもありますが、6か月以上経っても改善しない場合を停留精巣といいます。精巣が腹部に近い位置にあることで精巣の温度が高くなり将来的な男性不妊精巣腫瘍(がん)の危険性や、固定が悪いことによる精巣捻転合併のリスクを考慮し、専門的な治療が必要になります。基本的には、手術によって精巣を陰嚢内に固定します。数は多くはないですが、お腹の中に精巣がとどまった状態の腹腔内精巣は腹腔鏡を用いた手術になります。手術時期は1歳前後から2歳までが推奨されており、手術が必要と判断された場合には、近隣および連携する小児専門の医療機関をご紹介いたします。また、手術後の経過観察などの診療は当院でも可能です。