⾷物アレルギーについて
食物アレルギーとは、アレルゲンとなる特定の食品を摂取することで様々なアレルギー反応を引き起こすアレルギー性疾患の一つです。日本小児アレルギー学会による定義では、食物アレルギーは「食物によって引き起こされる抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象」とされています。なお、アレルゲンは経口接種だけでなく、皮膚から吸収することでもアレルギー症状を引き起こすため、注意が必要です。
⾷物アレルギーの原因
食物アレルギーは、食べ物に含まれる特定のたんぱく質を、体が異物と誤って認識してしまうことで起こります。そのたんぱく質が腸から体内に吸収される際、免疫システムが反応し、IgE抗体という物質が過剰に働いてしまいます。この免疫の過剰な反応により、様々なアレルギー症状が現れます。食物アレルギーを最も引き起こす食品は卵で、全体の約40%を占めます。次に多いのが小麦や乳製品で、これら3種類を合わせると全体の3分の2を占めます。その他では、クルミやカシューナッツなどの木の実、大豆、蕎麦、甲殻類、魚類、バナナやキウイなどのフルーツ、たらこやイクラなどの魚卵、落花生などが挙げられます。
⾷物アレルギーの症状
(即時型)
食物アレルギーは様々な症状を引き起こしますが、最も多いのは皮膚症状です。
皮膚症状
かゆみ、じんましん、皮膚やまぶた、唇などの腫れ(血管のむくみ)、赤み、ほてり、湿疹など、特定の食物が皮膚に触れることでかぶれ、赤み、腫れが現れることもあります。
呼吸器症状
のどの違和感(締め付け感)やかゆみ、息苦しさや胸の圧迫感、声がれ、咳、ゼーゼー・ヒューヒューといった音のする呼吸、息を吸うとき胸が凹む(陥没呼吸)、チアノーゼ(唇や顔が青紫になる)、呼吸困難など、特に喘息・咳喘息がある方は症状が悪化しやすい傾向があります。
目・鼻・口の症状
(粘膜の症状)
目の充血やかゆみ、涙が出る、まぶたの腫れ、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、口や舌の違和感、腫れなどで、特定の果物や生野菜を食べた後に、口の中や唇、喉に痒み・腫れ・イガイガ感などが現れること(口腔アレルギー症候群:OAS)があります。
消化器症状
吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、血便など多岐にわたり、摂取後、数分から数時間後に起こる即時型と数時間から数日後に症状が出現する遅延型があり、皮膚症状・呼吸器症状・全身症状を伴うこともあります。
神経症状
頭痛、ぐったりして元気がない、落ち着きがない、意識がもうろうとする、尿を漏らす、不安感など、特にぐったりしている、意識がもうろうとする、失禁を伴う場合は緊急性が高いので一刻も早く、小児の緊急対応と集中治療が可能な施設への受診が必要です。
循環器症状
血圧の低下、脈が速くなる・または遅くなる、不整脈、手足が冷たい、顔色が青白いなど
アナフィラキシーショック
アナフィラキシーショックとは、アレルギー反応によって血圧の低下や、意識障害・心肺停止など命に関わる重篤な状態です。ショック状態に陥った場合は、30分以内にアドレナリンの投与が必要です。ただし、30分以内に医療機関を受診するのは難しいことも多いため、緊急時には患者さん自身またはご家族がアドレナリン自己注射薬(エピペンなど)を使用する必要があります。特に小さなお子様の場合は、自分で注射を打つことができないため、ご家族の方が正しく対応できるよう準備しておくことが重要です。
また、近年では、保育園・幼稚園・学校などでも、教職員がご家族の代わりにアドレナリン自己注射を行える体制が整ってきています。お子様の命を守るためにも、周囲の大人が適切な知識を持ち、準備することが大切です。
⾷物アレルギーの診断・検査
食事している時に、お子様がじんましんなどの皮膚症状を起こした場合は、当院までご相談ください。ただし、じんましんは食物アレルギー以外でも引き起こされることがあるため、専門的な診断や検査を行わない限り、食物アレルギーとは断定できません。そのため、自己判断せずに、医療機関を受診して検査することが大切です。
問診
問診では、普段食べている食事やアレルギー症状が現れた時の状況などを詳しくお伺いします。
検査
プリックテストという皮膚の検査や血液検査などを実施し、食物アレルギーの原因として疑われる物質(アレルゲン)を特定します。
皮膚テスト(プリックテスト)
皮膚テスト(プリックテスト)とは、皮膚に小さな傷をつけて、試験用の卵や牛乳などのアレルゲンをたらし、アレルギー反応が出るかどうかを調べる検査です。反応がある場合は、皮膚に赤みや腫れが現れ、アレルゲンとの関連が疑われます(当院では行っていません)。
血液検査(IgE抗体検査)
アレルギー反応を起こすと血液中のIgE抗体の数値が上昇します。そのため、血液検査では、IgE抗体の数値を測定することで、アレルギー反応の有無を調べることができます。さらに、特定の食品に対するIgE抗体を個別に測定できるため、どの食材が原因となっているか詳しくわかります。乳幼児では、卵・小麦・牛乳の検査は外来で指からの少量の血液で、20分程度で結果が出ます。6歳以降の比較的大きなお子様は、5ml程度採血し検査を行っています。結果が出るまで1週間程度かかります。
経口負荷試験
アレルギーが疑われる食品を実際に少量ずつ口にしてもらい、体の反応を観察する検査です。これにより食物アレルギーの有無を確かめることができます。この検査が必要と判断した場合は、提携している高度医療機関へ紹介いたします。
⾷物アレルギーの治療
食物アレルギーの治療は、検査によって特定したアレルゲンを除去するよう指導します。食品の除去は最小限とし、除去することによって栄養不足にならないように他の食品で補えるよう栄養指導も行います。また、卵などは十分加熱したものを少量ずつ与えるように指導しています。3歳ごろまでに食べられるようになるお子さんもいます。